獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 俺はヴィヴィアンの肩を引き寄せると、バサリと広げた自分のマントに入れた。細身で小柄なヴィヴィアンは俺のマントにすっぽりと包まれた。
 僅かにでも力を込めれば壊れてしまいそうな繊細な感触が、手のひらに伝わる。華奢で柔らかな感触に、愛しい想いに勝るとも劣らない圧倒的な庇護欲が募る。
 何人からも、どんな障害からも、俺がヴィヴィアンを守る――!
「俺たちの正体に気づいた民がここにも大挙しているようだ。馬車を裏門に待たせている。警備は万全に敷いていてまず危険はないと思うが、念のため馬車まで顔を出すな」
 逃がさぬよう、何人にも奪われぬよう、柔らかな温もりをギュッと腕に抱き寄せて耳元に囁けば、ふいにヴィヴィアンから立ち昇る芳しい香りが鼻腔を擽る。
 甘やかな香りを胸いっぱいに吸い込んだ瞬間、体の奥がズクンと疼きジンジンと重たい熱が溜まりだすのを感じた。
 それは満月の夜に襲われる狂おしい焦燥感によく似ていた。
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