獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 公には明かしていないが、俺には祖である白虎と同じく発情期があった。発情周期は天文周期にピタリと重なり、満月の夜に発情症状に襲われる。
 皇家の記録を紐解くと、五代前の皇帝に同様の初見があったことが分かった。
 五代前の皇帝はこれをつまびらかにし自薦他薦問わず数多の美女を召し上げて発情期を謳歌していた。周囲も、神獣・白虎時代の名残の表われと好意的に捉えていたようだった。
 しかし、俺はこの事実を伏せることを選んだ。
 仮に周囲がこれを慶事と捉えても、好奇の目を向けられるのは避けられない。なにより、煩方の不要な気回しで女を宛がわれるなど絶対に御免だった。それらを拒む手間を惜しみ、結果的に厄介な症状に辟易しつつ理性と忍耐でやり過ごすことにしたのだ。
 ヴィヴィアンを前に、満月の光を浴びるのと同様の衝動を覚えたことに驚いたのはほんの一瞬で、すぐに理解が広がる。
 ……無理もない、運命の女性を前にして平常心でなどいられるものか。
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