獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 前述の通り、俺は発情期との付き合い方は心得ており、性衝動を耐え忍ぶことには慣れていた。しかし、性衝動は堪えられてもヴィヴィアンへのあふれる愛おしさを抑えることは不可能だ。
 俺は本能に衝き動かされヴィヴィアンの耳朶の後ろに唇を寄せると、甘く香る柔らかな肌をチュッと吸い上げた。
 これは発情と同じく白虎の習性のひとつで、気に入った相手に自分の印を残したくなるというものだ。発情中にこの欲求がより強く出るというが、日常も含め、俺がこれをしたくなったのは初めてだった。
「んっ!?」
 ヴィヴィアンが肩を跳ねさせたことですぐに唇を離したが、真っ白な肌にはクッキリと俺の印が残っていた。
 それはまるで、純白に浮かぶひとひらの花びらのよう。なんとも言えず愛おしく、吸い寄せられるように舌先を寄せ、匂い立つ朱色の花びらを舐め上げた。
 心と体が深い充足感で満たされていくのを感じた。
「……ヤベェ。天変地異の前触れか?」
 俺の横で顎が外れそうなくらい口を開けた阿呆面のガブリエルがポツリとこぼした呟きは、耳を素通りした。
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