獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 ヴィヴィアンが小首を傾げながら、コロコロと可愛らしい笑い声をあげる。
 その笑みの可愛らしさに、体の内が切なく疼く。
 かくも愛しい存在がこの世にあるのかと、この嬉しい発見は同時に我が身を焦燥に焼く責め苦のようでもあった。本能が熱く狂おしくヴィヴィアンを求めていた。
「さぁ、行くぞ」
 精一杯理性を総動員して平静を装うが、ヴィヴィアンを見つめる瞳は否が応にも熱を帯び、肩を抱く手には力が篭もった。

***

 その日の夜。私はマクシミリアン様からの呼び出しを受け、彼の部屋に向かっていた。
 部屋の前までやって来て扉をノックしようと右手を持ち上げたところで、その手がピタリと止まった。
 ……やっぱり、なにかがおかしい。
 どうしてマクシミリアン様は突然こうも甲斐甲斐しくなったんだろう? 中央公園の視察から急に過保護な親鳥のようになったマクシミリアン様の態度を思い出して首を捻る。
 マクシミリアン様は公園から皇宮へ帰る馬車内でも、私を隣に座らせてガブリエル様そっちのけで髪を手櫛で梳いてみたり肩や背中を撫でたりしていた。
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