獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 私は飛び退くようにマクシミリアン様の膝上を脱し、彼の座る位置からできるだけスペースを取ってソファ端の肘掛ギリギリに体を寄せて腰を下ろした。
 わっ!? ところが、マクシミリアン様はスッとこちらにお尻の位置をずらし、せっかく確保したスペースを埋めてしまう。
 私はマクシミリアン様と肘掛に挟まれて、身動きが取れなくなった。しかも背中に回ってきたマクシミリアン様の腕に引き寄せられて、懐に凭れかかるような体勢にされてしまう。
 互いの体がピタリと密着し、彼の首筋のあたりに鼻先が埋もれる。
 着衣越しにも体温と逞しい感触が伝わってきて、あまりの居た堪れなさにピキンと体を固くする。
 私は息を詰め、祈るような思いでマクシミリアン様が話し出すのを待った。しかし当のマクシミリアン様は、私の髪を指に遊ばせてみたり、首元のあたりに悪戯に鼻先を寄せてみたりと、一向に話を切り出そうとしない。
「あ、あの! それで『お話』というのはなんでしょうか!?」
 耳朶のあたりに吐息がかかるのを感じ、ビクンと肩を跳ねさせて叫んでいた。
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