獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 次の瞬間、目に映る景色が反転した。
「……え?」
 私はマクシミリアン様に圧し掛かられて、ソファの肘掛に後頭部を預けるような恰好で仰向けになっていた。
 マクシミリアン様は目を見開いて固まる私の耳のあたりを掠め、トンッと肘掛に腕を突く。
「きゃっ」
 上から覆い被さるような彼の体勢に慄いて、思わず小さな悲鳴が漏れてしまい慌てて口を噤む。厚い胸板に顎先が触れそうな近さに脈が跳ね、全身の体温が上がるのを感じた。
 清涼感のあるマクシミリアン様自身の香りがふわりと鼻腔を擽り、頭がくらくらした。
 マクシミリアン様は射貫くような強さで私を見つめ、重く口を開いた。
「これからするのは、お前と俺の今後についての大事な話だ」
 温度などないはずの声が、耳を焼いてしまうのではないかと思うくらい熱く感じた。
「は、はい」
 果たしてこれから聞かされるのは、どれほど重要な内容なのか……。
 なんとなく聞くのが怖いような、逃げ出してしまいたいような、不安が胸に沸き上がる。
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