獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 すでにお酒が入っているガブリエル様は上機嫌に語っていたが、途中で室内の尋常ならざる空気に気づいたようで首を捻っていた。
「……ガブリエルよ、お前は俺になにか恨みでもあるのか?」
 マクシミリアン様は目配せで近衛兵を下がらせると、ガブリエル様に向かって低く唸る。
「ハァッ? いったいなんのことだよ?」
 言い合うふたりを横目に、私はひとりぐるぐると思考を巡らせていた。
 ……さっきのマクシミリアン様の態度、まるで恋人に愛でも囁くようだった。もしかして、私が女だってバレたんじゃ……?
 いや、私に対してそれは絶対にあり得ない。だって私は、女性からモテはすれど男性から好かれるわけがないのだ! 
 一瞬過ぎった想像に青褪めるが、すぐに思い直した。
 仮に女とバレたとしても、女性的な魅力がゼロの私を口説きたい男性なんているわけがない。だから当然、「愛を囁くよう~」なんていうのは私の思いすごしで、マクシミリアン様の話というのはまったくの別件に違いない。
< 188 / 320 >

この作品をシェア

pagetop