獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 ガブリエルは小さく眉間に皺を寄せたが、メーンの二皿目・肉料理が運ばれてくると、ヴィヴィアンについてそれ以上尋ねてはこなかった。
「……ほぅ、これはもしや鹿肉か? アンジュバーン王国ではあまり食さんな」
「聞き及んでいる。しかし我が国では古くから、鹿やイノシシなどの鳥獣料理は”ジビエ”と呼ばれ親しまれている。今回は我が国の文化を知ってもらう意味であえて用意した」
 ガブリエルはナイフとフォークで切り分け、興味深そうに口にする。
「……ほぅ。家畜とはまた違う、滋味深い味わいだ。悪くない」
 ガブリエルは鹿肉を噛みしめるようにして、こう評価した。
「”ジビエ”の醍醐味は豊かな風味とその栄養価の高さ。口に合ったようでなによりだ」
「うむ、まさか鹿がこんなに美味いとはな」
「とはいえ、この風味を求めるとなると、鳥獣ならなんでもいいというわけにはいかん。餌により肉質は大きく異なり、ある程度狩猟場は厳選しなければならない」
「なるほどな」
 ガブリエルは俺の説明に頷きながら、鹿肉料理を完食した。

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