獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 俺の言葉に、いまだ事情を知らされていない案内役の女性は、目を真ん丸にしてガバッとこちらを振り仰いだ。
「ほぉ」
 驚きを隠せない女性を余所に、ガブリエルはニヤリと口角をあげた。少々悪いその笑みが、我が国のアクシデントを高みから楽しんでのものなのか、あるいはヴィヴィアンの関与まで想定したものなのかは分からなかった。
 そうこうしている内に、開演を告げるブザーが響き、幕があがる。
 暗転した舞台がスポットライトで照らされて、スラリとした体格の美貌の青年が浮かび上がる。
 ……あれは、ヴィヴィアン! 愛しい彼女の凛とした立ち姿を目にした瞬間、胸が歓喜に震える。彼女の主演は事前に聞かされて知っていても、実際にこの目で見た驚きは大きかった。
 もともと彼女には不思議な華があったが、クラシカルな舞台衣装を身に纏い化粧を施した姿は浮世離れした美しさ。さらに体格だけで言えば他の演者に比べて小柄だったが、緩急をつけたキレのある演技で舞台上の誰よりも大きく、そして輝いて見えた。
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