獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 場内アナウンスが流れて舞台が間幕に入っても、俺は第一幕の余韻に痺れ席を立つことはおろか、ガブリエルに気の利いた言葉ひとつ掛けられずにいた。
 ……ヴィヴィアンは見る者を魅了する、まさに天上の女神だ。
 美しい女神を俺以外の誰の目にも晒したくない。俺の腕の中に閉じ込めて、その瞳に俺だけを映して欲しい。こんな圧倒的な独占欲が己の内で燃え上がる。
 昨日はガブリエルに機会を奪われたが、今夜こそ俺は彼女に想いを告げる! そして彼女を永遠に俺だけのものにするのだ――! 
 決意を込め、膝上で拳を握り締めた。
 そんな俺の隣でガブリエルは案内役の女性共々、深く座席に腰掛けたまま幕の下りた舞台を見つめていた。
「驚いたな。正直、こんなに引き込まれる舞台は初めて観たぞ」
 口火を切ったのはガブリエルだった。
「特段演劇に造詣が深いわけではないが、ヴィヴィアンの見せ方は独特で斬新だ。なにより色気があるし、華があって大きくみえる。こんな演技手法は初めてだが、実に面白い」
 彼の感想は、俺が抱いたそれとピタリと重なる。
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