獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 マクシミリアン様は凛と背筋を正し、艶やかな黒髪で燦々と注ぐ陽光を弾きながら華麗な手綱さばきで白馬を駆る。その姿は威風堂々として、虎耳の有無など関係なく皇帝の風格にあふれていた。
「マクシミリアン皇帝陛下万歳!」
 マクシミリアン様がスッと手を挙げて応えれば、道端を埋め尽くす観衆はワッと沸き上がった。
「なんともご立派はお姿だねぇ。やはり我らが皇帝陛下は、マクシミリアン様以外にいやしないよ!」
「虎耳の有無なんかまるで問題じゃない。あの威風溢れるお姿をごらんよ? 皇太后様は気をおかしくされているのさ。なにが『耳なし皇帝が国力低下を招く』だ、馬鹿言っちゃいけないよ!」
 これは朝市を視察した時にも思ったことだが、国民は物の本質を実によく理解している。
 仮に皇太后様の主張通り血の薄まりで国が弱体化するのなら、国民が獣人顔を失った時にとうに他所の国に攻め込まれて滅びていただろう。
 現在、ヴィットティール帝国が気候等の厳しい条件下でもきちんと機能しているのは、偏にマクシミリアン様の手腕による。
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