獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 私はマクシミリアン様の苦悩を間近に見て知っており、彼の心の内を思うと胸が狂おしく締め付けられる。しかし、そんな私の思いとは対照的に、当のマクシミリアン様はどこか吹っ切れたような、晴れ晴れとした表情をしている。もしかすると彼の中で、何某かの心境の変化があったのかもしれない。
 そして、それにはハミル殿下が大きく影響しているのだろうと、マクシミリアン様の斜め後ろで馬を駆るハミル殿下を眺めながら思った。
 そのハミル殿下が乗る馬は他の隊員らと同じ葦毛の個体だ。同様に、彼が身に纏うのも他隊員と揃いのお仕着せだった。
 ……あぁ、そうか。彼が臣下に下った今となっては、ハミル殿下という呼び名も正しくないんだ。
 少しの寂寥感と共に、ふとこんなことを思った。

 マクシミリアン様は、到着した皇宮前広場で居並ぶ国民に向き合っていた。国民はマクシミリアン様の登場に沸き、惜しみない拍手喝采で出迎えた。
 広場前方の一段高い壇上に国民からの視線を一身に集めて立つマクシミリアン様は並々ならぬ貫禄に満ち、虎耳などなくとも皇帝以外の何者でもなかった。
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