獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 無事にアンジュバーン王国との国交が樹立し、国民からの圧倒的な支持を得てマクシミリアン様の帝位も続投が決定。皇太后様の追放やハミル様の皇統離脱で皇家はゴタついているけれど、ヴィットティール帝国には平穏な日常が戻ってきたはずだった。
 ところがそんな安寧の周囲を余所に、私はふたつの手、もとい、選択肢を前に窮地に追い込まれていた。
「「さぁ! どらちを取る!?」」
 ヒ、ヒッ、ヒェエェエエエ――ッッ!
 ふたつの手とタイプの異なるふたつの美貌がド迫力で迫り、猛烈な圧力をかけてくる。
「……あ、あの。絶対にどちらかを選ばなくてはダメですか?」
 私は白目を剥き、腰を引け引けにして、一縷の望みをかけて問う。
「「ダメだ!!」」
 ふたりにギンッと一喝されブルリと震える。
 ……う、ぅううっっ。そんなに凄まなくたって、いいじゃない。
 半泣きになりながら、しかしどちらかを選ばなければならないというのなら、私の中で答えは決まっていた。
 私の決定をふたりに示すべく、おずおずと手を伸ばした。

***

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