獣人皇帝は男装令嬢を溺愛する ただの従者のはずですが!
 ヴィヴィアンが女と知った瞬間には、もう俺の妃は彼女だと決めていた。
 ヴィヴィアンをすぐにでも俺のものにしなければとても気が休まらず、まともに政務も手につかなかった。かくなる上は、一刻も早く彼女を俺のものにしようと決心した。
 始まりは多少強引でもいい。そこから真心を尽くして俺の愛を伝え、彼女の想いを育ててゆけばいいのだ。
 ところが、そう思っていたところにまさかの伏兵が現れた。その伏兵が俺にとって手ごわい障壁となることは必至だった。
 ガブリエルとは付き合いが長いからこそ、奴がヴィヴィアンに向ける想いが真剣なことはすぐに分かった。
 そして今、俺とガブリエルはヴィヴィアンに手を差し出し、天からの裁可を待つような思いで彼女の決断を見つめていた。
 長い、長い沈黙が続き、やがてヴィヴィアンの手がゆっくりと持ち上がる。
 息をのみ、その手のゆく先を注視する。ドクンドクンと血が巡る音が、いやに大きく響ていた。
 嫋やかな手はふわりと宙を舞い、俺に向かって真っすぐに伸びてくる。
 あぁ、ヴィヴィアンが俺を選ぶ――!
< 316 / 320 >

この作品をシェア

pagetop