【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜




 それを言われたら、確かにそうだ。結婚して夫婦になったんだから、何回もお互いに体を見せ合っている。……何回も棗さんに抱かれているのに、こうして裸を見せ合うことは恥ずかしいとさえ思う。

 だけど覚悟を決めるしかないと思った。だって初めての新婚旅行だから。夫婦の初めてだから。


 




 「……聖良、もっとこっちに来い」

 「え、でも……」

 「いいから、もっとこっちに来い」
 
 「……は、はい」
 
 言われた通り、わたしは湯船の中で離れていたその距離を縮めるように、棗さんに近付いた。

 パシャン……。移動するだけで揺れる湯船が、さらにそのドキドキを増していく。

 「……聖良、お前はキレイだな」

 「え……?」

 「お前は本当に、キレイだ。……俺の妻になってくれて、ありがとう」

 「な、棗さん……?」

 棗さんはわたしの首すじに唇を這わせてきた。それはもうじれったくて、くすぐったかった。




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