今宵、狼神様と契約夫婦になりまして(WEB版)
相澤は徐々に満たされてゆくグラスを見つめる。
陽茉莉との関係をはっきりさせたほうがいいというのは、相澤もずっと感じていた。
独身の男女、しかも上司と部下が一緒に住んでいるなど、普通に考えると非常識な状況だ。もしも会社の同僚などに公になれば、相澤だけでなく陽茉莉まで立場が悪くなる。
「まだ〝清廉潔白な間柄〟なわけ? あれ聞いたとき、悪いけど大笑いした」
その下りについては、後日笑い話として高塔から聞いた。陽茉莉が詩乃のことを相澤の恋人だと勘違いしていて、そう言ったと。
「……きちんとしないといけないって、わかってる」
「礼也と気まずくなった後に新山ちゃんの保護が必要になったら、俺が引き受けてやるから安心しろ。俺も新山ちゃんの愛妻ご飯食べたいからな」
高塔は相澤に発破をかけるように、軽口を叩く。
その瞬間、相澤の目付きが剣呑なものへと変わり、部屋の気温がぐっと下がった。
「心配無用だ。陽茉莉は俺が守る」