i -アイ-
「碧さぁん、帰っちゃうのぉ?」
「ね、アフター呼んでくださいよぉ」
客そっちのけか。
客も仕方ないって顔だ。
中まで一応入ってきたはいいが。
「お客様?」
黒服があたしを見る。
「ああ、碧さんの迎えです」
「え」
驚いた顔をする黒服。
碧さん、上手く対処することだって容易なはずなのに、何をハーレム作ってんだ。
「碧さん、帰りますよ」
声を張れば、あたしの方を色気たっぷりな笑顔で見る碧さん。
「来てくれたんだね、ありがとう」
高級キャバクラのキャバ嬢の女性たちよりも色気があるオーナーって、どうなんだ?
「来てるの分かってましたよね?」
「悪い。呼んで欲しくてね」
「はいはい。俺を呼ぶのはいいですけど、足はないですよ?」
「ああ、車ならあるからね。ただ」
碧さんはあたしに手を伸ばし、フードを片手で取って、頬に手を滑らせる。
周りがあたしを見て息を飲んだ。
「少しでも早く、君に会いたくてね」
本当に何を考えているか分からない人だ。
「酔ってます?飲酒運転の車はお断りなんですが」
そう返せば、ふっと口元に手を当てて笑う碧さん。
男相手にそんなことをしたら、ゲイであることを公表しているも同然。
碧さんがいいならいいけど、こちらとしては探り探りだ。