i -アイ-
「碧さん、俺はあなたに大切にしてもらいたいわけじゃない。駒として使ってほしい。その方が何かと良くてさ」
さっぱりと、ただの契約であるように話す。
「前も言った通り、鬼龍組若頭につくのは i なんだ。碧さんに久遠藍人が付くんじゃない。碧さんだって、i に愛着なんてないだろ?」
クスクスと笑えば、頬杖を着く碧さん。
「役名が変われば、運命も変わるんだな」
呟くようにそう言った碧さん。
食事を終えて食器を片し、一緒に洗う。
「前にも言ったけれど、君は御庄榛人に似ている。その事も、君は知っていたんだろう?」
「はい。御庄榛人のことも調べましたから」
というか、娘ですから。
「親父に挨拶に行くのは、君は特に覚悟が必要になると思う。」
それはもう重々承知だ。
死んでもおかしくない。
死ぬ気はないが、いずれ通る道だ。
鬼龍灯志(きりゅうとうじ)。
「なんと言われようと、何をされようと、俺は自分で決めたことは全うします。」
「何が、そんなに君を強くさせるんだろうね」
独り言のように呟かれた言葉に、あたしは碧さんを見上げる。
「碧さんを強くしたのは誰ですか」
そう聞けば、瞳が揺らぐ。
あたしを見つめて、少し瞳が潤んだ。
すぐに碧さんは目を逸らして、キッチンから離れた。