今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
西園寺先生は意を決したように立ち上がると、通りがかりの看護師に「ストレッチャー持ってきて! すぐに頭部CT! 優先で」と指示を出す。

処置室からすぐさまストレッチャーが運ばれてくる。西園寺先生はまゆちゃんに向かってにっこりと笑った。

「少しだけ検査をしてみようか。大丈夫、この看護師のお姉さんが一緒にいてくれるから、ひとりぼっちにはならないよ。そうだ、あとでおもちゃを持っていってあげよう。楽しみにしてて。また会おうね」

まゆちゃんは大丈夫だと理解したようで、少しぼんやりしたまま頷く。

西園寺先生は不意に表情を険しくして、私に向けて小声でささやいた。

「眼の運動障害、項部硬直――おそらく脳に異常がある。頭を打ったか、あるいは体のどこかをぶつけた衝撃で脳が損傷を受けたのかもしれない。すぐに検査して必要な処置をするから」

咄嗟に言葉が出てこなくて、私は胸の前で手を握りこくこくと頷く。

ストレッチャーに寝かされたまゆちゃんが運ばれていく。西園寺先生はそれを追いかけようとして身を躍らせ――。

「杏」

突然こちらに体を寄せ、私の頬に手を添える。

「気づいてくれてありがとう」

私を引き寄せたかと思うと、ちゅっと頬にひとつ、素早いキスを落とした。
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