今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「――っ!」

すぐさま彼は白衣を翻し、ストレッチャーを追いかけていく。

私は頬を押さえて、呆然と彼の背中を見送った。

……これで、よかったのよね……。

どっと気が抜けて、倒れるように近くの壁にもたれかかった。はぁぁ、と大きく息をついて、いつの間にか上がってしまっていた息をならす。

まゆちゃんは大丈夫。あとは西園寺先生がなんとかしてくれるはずだから……。

私にできることは、もうないのよね。

救急車の音はまだ鳴り止まない。

戦場のようなその場所から逃げるようにフラフラと歩いて、私は自宅に帰るのだった。



その日の夜、仕事用の携帯端末に見知らぬ番号から電話がかかってきた。

「はい。白雪です」

私が出ると、しばらく間が空いて。

『西園寺です』

彼の、少し張り詰めた低い声が受話口から響いてきた。昼間の鬼気迫る彼の姿を思い出して、緊張が蘇ってくる。

「西園寺先生? あの……大丈夫でしたか……?」

漠然とそんなことを尋ねると、彼はゆっくりと息をついて『ああ』と答えてくれた。
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