今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
彼にしては、異常に言葉数が少なく、落ち込んでいるように聞こえる。頼もしい返事とは反対に、彼のことが心配になってきた。

『君にお礼が言いたくて電話をしたんだ。まゆちゃんのこと』

「あ……」

まゆちゃんが大丈夫だったのか、ずっと気になっていた。怖くて続きを聞けないでいると、彼が先に口を開いた。

『やはり脳に異常が見つかった。今はもう大丈夫。心配いらないよ』

「そうですか……」

ホッと胸を撫で下ろす。処置が間に合ってよかった。

でも、その割には西園寺先生の声が落ち込んでいるように聞こえるのはどうしてだろう?

「あの……疲れています?」

『ん……そうだね。疲れているかもしれない』

西園寺先生が力なく笑う。きゅっと携帯端末を握りしめて、彼の小さな声に耳を傾けた。

『助かった患者もいたけれど、命を落とした患者もいたよ。まぁ、病院なんだから、亡くなる人はたくさんいるし、いちいち落ち込んでもいられないけれど――』

ふっと苦笑するように息をもらす。どこかあきらめたように、虚しい吐息だった。

『……疲れるよなぁ……こういう日は』

「西園寺先生……」

やるせない気持ちが湧き上がる。彼の悲しみを拭ってあげたいけれど、どうしたらいいのかもわからない。
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