今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「……私になにか、できることはありますか?」

『君に?』

西園寺先生がクスリと笑う。医者でもない私にできることなんてなにもないのだと、自分でもよくわかっている。

でも彼は、悪戯っぽく提案してくる。

『そうだなー……あんずちゃんがキスでもしてくれたら元気でるかも』

胸がざわついた。私のことをからかっている? 彼の狡猾な表情が頭の中にちらつく。

その言葉が本心なのか、それともただの言葉遊びなのか――昼間くれた頬のキスを思い出して、胸の奥がじわりと熱くなる。

私のキスで元気がでるなら、そう言いたくなって、けれど素直には言えなくて、必死に代わりの言葉を探す。

「……そばにいるくらいだったらできるかもしれません」

わざと曖昧な言い方をして、彼の反応を確かめてみる。本当に私を求めてくれているのかどうかを。

彼はしばし黙り込んだあと――。

『……しばらく病院から離れられそうにない』

やんわりと断られ、やはりただの言葉遊びだったのだと思い直した。本気になりかけていた自分が情けない。

「お役に立てずごめんなさい」

恥ずかしさから全部丸ごとなかったことにして通話を切ろうとすると。

『……来てくれないの?』

思わぬことを尋ねられ、終話ボタンをタップする手が止まる。
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