今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「……会ったら、教えてくださる約束でしたよね。電話番号や彼の職場の情報を誰から聞いたんですか」

私が恐る恐る席に近づくと、彼はまぁまぁとなだめて座るよう勧めた。

「とりあえず飲み物でも。なにも頼まないとお店に失礼ですよ」

そんなモラルだけはちゃんとあるらしい。メニュー表を開いて私へ差し出し、近くのスタッフを呼び止める。

「……カフェインレスの紅茶かコーヒー、ありますか?」

スタッフに尋ねると、ルイボスティーがあるとのこと。それをお願いしますと注文を済ませる。

彼はようやく私の質問に答えてくれた。

「私のような大金を取り扱う仕事は、信用商売ですからね。各所に伝手がありますし、お願いすれば個人情報を収集することくらい容易いんですよ」

「……それって違法ですよね?」

「バレればね」

バレない、とでも言いたいのだろうか。実際、個人情報を流したほうも流せとそそのかしたほうも、バレれば不利益が生じるわけだから、証拠を残すような真似はしないだろう。

「さて、本題に入りましょうか。今日は杏さんを説得しに来ました。あなたの彼氏より、私と結婚したほうがしあわせになれるとわかっていただきたくて」

マイペースにコーヒーを口に運びながら長門さんは話し始める。
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