今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
私はまだ膨らんでいないお腹に手を当てた。見た目にはわからないけれど、この中には確かに、私とは別の小さな心臓が動いている。

この妊娠は『できちゃった』わけじゃない。『授かった』んだ。

必要とされて宿った命なのだと実感して、じんわりと涙が滲んだ。

「でも、あなたはいずれ巨大グループ企業の最高責任者となる! その妻が自由に遊び呆けていいだなんて言ってはいられないでしょう!」 

「あいにく、俺は妻を役職だとは思っていない。実家の仕事を押しつける気なんてないよ。杏の仕事は別にある」

悠生さんが私の肩を抱き、引き寄せる。

私を見つめる彼の目は穏やかだった。大丈夫、安心しなさい、俺が守るから、そんな意思が彼の表情から伝わってくる。

「俺のそばで笑顔でいてくれること、それが杏の役目だ……まぁ子育ては大変だろうけど、できる限りサポートはするから」

私は大きく頷く。もう彼との結婚に迷いなんてなかった。この人なら、私のことを大切にしてくれる、私の気持ちに寄り添ってくれる。

この先の長い人生を一緒に歩いてくれる人なんだって、そんな実感が湧き上がった。
< 180 / 275 >

この作品をシェア

pagetop