今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「杏、ダメだよ。急にそんなこと言っては。抱きたくなる」

背中を丸めて屈むと、私の鼻先にキスを落とした。

「俺が必死に、君に手を出さないよう気をつけてるの、知ってるだろう? わざわざ寝室まで分けて」

「……必死かどうかは知りませんけど、気を遣ってくれてるのは知ってますよ」

「だったら挑発するようなことを言わないで。これ以上、俺を弄ぶつもり?」

「これ以上って……私、今まで弄んだことなんて一度もないんですけど……」

弄ばれたことなら山のようにある。今この瞬間だって、彼が口にする思わせぶりな言葉の数々にドキリとさせられている。

また私をからかって、遊んでる?

だから、確かめたくなってしまう。彼の言葉で、態度で、そして行動で。

「あの……私、少しだけなら……」

医師から性交渉を止められたわけでもない。妊娠の経過だって良好だって言われている。

ちょっとだけなら――激しいことさえしなければ大丈夫なんじゃないだろうか。

抱いてほしい、愛を確かめたい、そう促す私に、彼は甘い口調で叱る。

「杏。少しでも不安要素があるなら、すべきじゃないと思っている。これでもし君が流産でもしたら、俺は悔やんでも悔やみきれないから」

「……そう、ですね」
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