今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
泉河さんを朝一でフロアの端にある休憩室に呼び出した。忙しい時間帯であるせいか、周囲には誰もいない。

むしろ、こんな忙しいタイミングに呼び止めて申し訳ないとは思ったが、気が急いていた。恐縮していても仕方がないので、完結に話すことにする。

「突然申し訳ありません。実は、妊娠しました」

「えっ――」

泉河さんは悠々と缶コーヒーを呷ろうとしていたが、その手を止め、目をまん丸くして私を見た。

「今後の体調次第ではありますが、順調にいけば十月の後半あたりから産休をいただきたいと思っています。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。調整、よろしくお願い致します」

突然の報告に仰天したらしく、泉河さんはぽかんとしたまま固まっている。

しばらくすると平静を取り戻し、目線を漂わせながらもお祝いの言葉を口にした。

「……そうか、おめでとう。それにしても、驚いた。結婚もまだしていなかったよな、急に妊娠なんて言われるとは」

私は「あ」と声をあげる。説明の順番を間違えている。

こういうときはまず結婚報告だろうに。子どものことで頭がいっぱいで抜けていた。
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