今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「白雪、お前、母親業を舐めてるだろ。家でのんびり仕事ができると思ったら、大間違いだぞ?」

泉河さんが後頭部をがりがりとかきながら苦い顔をする。

二児のお父さんである彼が、実感のこもった深いため息をついた。

「……言っておくが、育休明けは地獄だからな? 会社が終わったら、家で後半戦が待っている。遊んで遊んでとせがむちびっ子どもをなだめながら、飯作って、食わせて、風呂入れて、寝かしつけて。もちろん、すんなりなんて寝てくれないから、さんざんグズグズに付き合って、家事が終わる頃にはもう深夜だ」

泉河さんが語るリアルな育児体験にポカンと口を開く。

子どもは素直に八時か九時に寝てくれるものだと思っていたのだけれど……どうやら違うみたいだ。

「しかも、ちびっ子どもはこちらの都合なんておかまいなしに夜泣きする。そのうえ、一度起きたら寝てくれない。うちの嫁さんの場合、毎日睡眠三時間でフラフラしながら会社に行ってた。夜泣きの最中もふてぶてしく寝ていた俺を、嫁さんはまだ恨んでいる。今でも俺の安らかな寝顔を見るたびに、あの頃を思い出して殺意が湧くんだと」

「殺意……ですか」

ただならぬ単語に、よっぽどだったのだろうなぁと推測する。

子どもを見つつ、その横でパソコンを開いて優雅に仕事――とはいかないのかもしれない。
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