今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「土日はもっとひどいんだが……聞くか?」

「……いえ、もう大丈夫です」

不安になるような体験談しか出てこない気がして、丁重にお断りした。

私も悠生さんの安らかな寝顔に殺意を覚える日が来るのだろうか……?

「それに、子どもはしょっちゅう熱を出す。有給なんて半年でなくなるぞ」

さんざん脅されて沈黙する私を眺めたあと、泉河さんは缶コーヒーを飲んでふぅっと息をついた。

「あまり焦らないほうがいい。誰もお前からキャリアを奪おうなんて考えてないし、この何年かスピードを落としたところで、一生追いつけないわけじゃない」

私の焦りを見透かした泉河さんが釘を打つ。

無意識のうちに、前線を退いたら一生戻れないような気がしていた。

「……手本になってくれる女性社員がいればよかったんだが。百合根も会社辞めちまったし。彼女の場合、育児が落ち着いたら編集長に復帰してもらおうと、上も考えていたみたいなんだが」

百合根さんは『今は、きっと育児を頑張る時期なのよ』と言って退職してしまった。会社としても彼女を手放すのは惜しかっただろう。

「俺としてはもったいないなぁと思うよ」

「思いきりのいい百合根さんらしいとは思いますけど」

「白雪は辞めるなよ?」
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