今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
ポンと肩を叩かれる。なんだか引き留めてもらえたようで、うれしかった。

「まぁ、お前もある種の仕事人間だし、働くなって言われるのは酷かもしれないけど。しばらくは素直に周りに甘えておくことをお勧めする」

「はい……。焦っていたのは確かなので」

「様子を見ながら、都度調節していけばいい。比較的融通の利く企画を用意しておくから」

「わかりました……ありがとうございます」

缶コーヒーをゴミ箱に捨て、ひらひらと手を振って休憩室を出ていく泉河さん。

そのうしろ姿を見送って、お腹をポンポンと撫でながら、今も生きようと頑張っている赤ちゃんに向かって話しかける。

……ごめん。お母さん、焦ってたかも。

仕事も大事だけれど、赤ちゃんも大事。悠生さんのことだってないがしろにはしたくない。

守りたいものばかりで、ただ頑張るだけでは体がいくつあっても足りそうにない。

百合根さんは、そのことがわかっていたのかな……。

仕事は一瞬手放したところで、消えたりはしない。でも、産まれたばかりの子どもを手放すわけにはいかない。

きちんと優先順位を立てようと、自分の今後と向き合った。


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