今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
しかし、彼はキョトンとして箸を止める。

「別に、その店に馴染みはないけれど……まさか、値段とかそういうことを気にしてる?」

ようやく思い当たったらしく、彼は困ったように笑う。

「あのストーカー男に大仰なことを聞かされて気を遣ったの? 別に普通でかまわないんだよ?」

「今までは、どんなお食事をしてましたか?」

「日中は病院のみんなと同じお弁当やおにぎりを食べているよ」

そういえば取材をしたときも、外科医はのんびり外食をしている暇なんてないと漏らしていた。

とにかく時間がないし、あまりお腹に詰め込み過ぎても集中力がなくなるからと。

「夜はあまり。軽食を買って食べることが多かったかな。どうしてもお腹が減っているときは、病院の近くのラーメン屋とか」

「ラーメン……」

「牛丼も無性に食べたくなるときがあるよね」

「牛丼……」

あまりにも庶民的なメニューが並んでいて唖然としてしまう。

「君が食べたいものでいいよ。お互い仕事があるし、平日はできる限り手間がかからないものがいいかな。でも、特別な日はうんと豪華にしようか」

悠生さんがにっこりと笑う。どうやらメリハリのあるお金の使い方をする人のようだ。

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