今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
無意識のうちに両親の喧嘩を思い出し、母とは真逆の女性像を追い求めていた。

理論的な会話ができて、さっぱりとした性格の女性がいい。終わったことをネチネチと掘り返したり、いつまでも引きずるようなうしろ向きな女性はごめんだ。

前向きな女性がいい。ポジティブで、どんな苦境に立たされても前を向いて歩いていけるような。

ふと思い出したのは、俺が研修医時代に助けられた隣のベッドの女性。

なんという名前だったか。もはや覚えてもいないのだけれど、とにかく前向きでたくましい性格だったことは覚えている。

あんな女性がフラッと現れれば、こちらから求婚するのに。

そんな中、眞木先生から突然取材の話を持ちかけられた。

以前手術をした女の子が元気になった姿を見せてくれたから、ぜひ協力してやりたいと。

『でも、俺は写真が苦手だし、うちの病院の強みはやっぱり循環器だから、若くて格好いい西園寺先生がいいんじゃないかな? それに、君も知らない女の子ではないんだよ?』

その女性の名前を聞いた瞬間、俺は眉をひそめて反応した。

『白雪……杏?』
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