今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
眞木先生から紹介されたその人は、すっかり大人の女性に成長していた。

礼儀正しくて、真面目そうで、それでいてどこか突き抜けている。

六時間にも及ぶ手術をずっと見学していたと聞いて驚いた。かと思えば、大手術を終えて疲れ切った俺に取材をせがむなど、破天荒な一面もあって。

どうやら命の恩人である眞木先生に恋心を抱いているようで、つい嫉妬にかられ、執拗に迫ってしまった。

口説いてもさっぱり篭絡されない彼女を相手に――手ごたえはあるのだが、どうも強情で――こうなったら意地でも落としてやろうと家に招き、強引にキスを与えた。

全部奪ってしまうこともできたのだろうが、一夜の関係で終わせないようにと、その日はおとなしく家に帰してやった。

少しは関心を持たれたかと思いきや、次に顔を合わせたときには、彼女は知りもしない相手との見合いを受けようとしていて、気持ちが焦り――。

つい、孕めてしまった。

彼女には申し訳ないことをしてしまったかもしれない。彼女はまだ若い、今後の人生をゆっくりと考えていきたかっただろうに、有無をいわさず妊娠させてしまった。

もちろん、自分の人生すべてをかけて責任を取るつもりでいる。

不幸になったなどと思わせてたまるか。
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