今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
徹底的に尽くそうと覚悟を決めるが、そんな決意をよそに、彼女は俺との新生活に不思議なほど順応していく。

やはりどこまで行っても前向きな女性で。

『無理やりなんて、思ってない』

俺の懺悔を制し、はにかむように頬を染める。

『私のお腹に、授けてくれたんだって思ってる』

俺が無理やり作り出したこの状況を、あっという間に肯定し受け入れてしまった。

丸ごと抱きしめられ、許される感覚。

言われた瞬間は作り笑顔すらできないほどに感極まってしまい、そんな自分が滑稽で、困るとも喜ぶともつかないおかしな顔をしてしまった。我ながら情けない。

どこか頼りないくせに、思いきりがよくて、たまにとんでもなく深い懐を見せる強い女性。

一日一日と、彼女と過ごす時間が増えていく程に、自分の直感が正しかったことが証明されていく。

どこまでいっても彼女は優しく、かわいらしく、愛おしい。

彼女との出会いのことは、黙っているつもりでいた。

せっかく彼女が忘れてくれているのだから、そんな情けない過去のこと、わざわざ掘り返す必要もない。

しかし、眞木先生との会話の中で、とうとう彼女は気づいてしまい――。


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