今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「前にも会ったって、どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか」

怒っているんだか動揺しているんだか。複雑な顔で詰め寄ってくる彼女。ひとまず、その唇を奪い反論を塞ぐ。

「気づかない君が悪い」

彼女の表情がふんわりととろける。キスをしただけですぐこれだ。

何度か『以前にも会ったことがあるか?』と問われ、その度に嘘をついていたのは俺なのに、責めるどころか納得してしまうなんて。人がいいにも程がある。

「覚えていてくれなかったの、ちょっとショックだったよ」

これも嘘だ。当時は女性からキャーキャー騒がれるのが嫌いで、わざとごつめの眼鏡をして他人と目を合わせず、存在を消していた。

だから、彼女が俺になんの印象も抱いていなかったとしても不思議ではない。目をよく見ていないのだから。

なのに。

「……ごめんなさい」

素直に謝ってくるので、もっと意地悪がしたくなる。

傷ついているフリをして、彼女を抱き込み幾度となくキスを与え、お腹に負担がかからない程度に押し倒す。
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