今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「……もう、そうやってすぐそういうことしようとする。ダメだって言ってるじゃありませんか……」

「精一杯耐えているじゃないか。褒めてもらいたいくらいだ」

「……私だってつらいんですよ?」

暗に抱いてほしい、でも耐えているのだと諭され、押さえていた本能がぞわりとあふれ出しそうになる。

……ダメだ。

なんとか押し留め、昂った感情をいなす。

今、彼女の身体は大事な時期だ。無理をさせるわけにはいかない。

安定期に入ったら思いっきり――いや、それも危険か。出産後、体の調子が戻ったら、これでもかというほど愛をくれてやろう。……まだまだ先は遠いな。

まさかたった一度彼女を抱いただけでお預けをくらってしまうとは。

これから少しずつ彼女を暴き、知り尽くしてやろうというときに。なんと残酷なことか。……いや、自業自得だが。

「俺も早く君をめちゃめちゃにしてしまいたい……」

「あの日、もうめちゃめちゃにしたじゃありませんか」

彼女はまだ足りないのかと言いたげに反論する。

「一度で足りるものか。もっともっと何度も、飽きるまで君の体を貪りたかった……」

ささやきかけた耳が赤く染まっていく。「飽きられたら困ります」と言って、なんとか強がった様子だった。
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