今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「私が研修医だった悠生さんを庇ったから、結婚してくれたんですか?」

彼女は彼女なりに考えを巡らせた様子。だが――。

「……違うよ」

そんな単純な理由ではないし、助けてほしかったわけでもない。

注意深く彼女を見て、考えて、決めたこと。

……いや、本当にそうだろうか。運命的なものを感じたのは確かだ。実は案外、直感かもしれない。

「……強くてたくましい君が好きって思っただけ」

ちゅっと額にキスをして欲情を押さえると、彼女は不安そうな表情でこちらを見つめてきた。

「たくましいって……それって、私があのとき松葉杖を壊したから?」

「……壊れたの?」

「床に叩きつけた拍子にひび割れちゃって。松葉杖って、体重を支えるには適しているけれど、斜め横から加わる衝撃には弱かったみたいで」

「君って……」

松葉杖を叩き割った女――そうと知っていたら、また彼女の印象も変わっていたかもしれない。

思わずくつくつと喉の奥を震わせて笑う。

「まぁ、そういう後先考えるのが下手なところも、好きだよ」

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