今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
俺自身、父親のことは医者として尊敬しているが、彼のような生き方はどうなのかと内心疑問視している。

「俺が欲しいのは、自由に結婚する権利と猶予です。まだ須皇総合病院で学びたいことがあるので」

「帰ってくるつもりはあるのか?」

「そりゃあ親父が倒れでもしたらすぐ帰りますが、まだまだ元気でしょう?」

「ハッキリしておいてほしいんだよ。後継の問題が心配で気苦労が耐えない」

大病院のトップともあれば、純粋に患者を助けるだけでは成り立たない。

派閥などもあるのだろう、次期院長に息子を指名することを明示しておかなければならない。

「帰ってくるつもりがあるなら、母さんのことは私が説得しよう」

「説得ねぇ……」

「一家の大黒柱なんだから、やるときはやるさ」

「そうやっていざとなると権力を振りかざすから、母さんに嫌われるんですよ」

「えっ!? そうなのか? こういうのが好きなんじゃないのか母さんは」

まさか自覚がなかったのだろうか。

普段は家庭を顧みないくせに、たまに口を出したかと思えば、知った顔で命令してくるあたりが母親は気に食わないのだと。

偉ぶった態度が夫としての威厳だとでも誤解している?
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