今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
私は無理をしていたのかもしれない。ネガティブなことはなるべく見ないよう、口にしないよう、呑み込んでいた。

本当はすごく小心者で、小さなことに一喜一憂しては不安に駆られているのに。

なるべく考えないようにして、情けない自分から逃げていた。弱い自分を他人に晒す勇気がなかった。

「不安にさせてしまってゴメン。美濃さんは、本当にただの友人なんだ。俺が君との結婚を決めた理由に、彼女は関係ない」

再びきゅっと抱き寄せられる。彼の肩に自分の顔を載せながら、言葉の続きを待った。

「……一目惚れだったんだ。いつも前を向いている君の心に、ひと目惚れをした」

心にひと目惚れ……?

一瞬戸惑ったけれど、私と彼との馴れ初めを遡っていくうちに、なんとなくわかるような気がした。

私も彼の内面を知っていくほどに惹かれていった。きっとそれに近い感覚なのだろう。

「絶対に手に入れたいと思った。誰にも譲りたくないと。だから、君を妊娠させて俺のものにした。……ゴメン、姑息な手段を使った」

私に向けられていたはずの『姑息』という単語が、彼のほうから出てくるとは思わなくて目を瞬かせた。
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