今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「あの……」

私はふたりに向けて、おずおずと切り出した。これまで私は、彼らの前ではほとんどだんまりで、まともなコミュニケーションも取れずにいた。

だからこそお母さまは不安に思っているのかもしれない。

「私は、育児も、仕事も、悠生さんの妻としても、全力で頑張りたいと思っています。西園寺家のお務めのことはまだよくわかりませんが、精一杯努めていきたいと思いますので、ご指導よろしくお願いします」

私が腰を折ると――と言っても、お腹がつっかえてたいして折れもしなかったけれど――ご両親はポカンとして私を見た。

「……それで? 母さんは嫁をびしばし鍛えていくスタンスなのかい?」

お父さまの言葉に、お母さまはふうと肩を落とす。

「……苦しい思いをするのは、私だけで充分です」

顔を上げた私に、お母さまは背筋を真っ直ぐに伸ばして向き直る。

「仕事、ということは、あなたは働いているのね。どんなご職業をなさっているの?」

「出版社に勤め、ライターをしています」

「そう。立派なご職業についているのね」

立派と言われて正直驚いてしまった。母からも、長門さんからも、意義のない無駄な職業だと言われ続けていただけに。

おそらく、きちんと社会に出て働いているのねと言いたかったのだろう。

お母さまは、そんな私を少しだけ買ってくれたようだった。
< 259 / 275 >

この作品をシェア

pagetop