今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「掃除なんて、多少サボったって死なないから大丈夫。そうだ、柚姫の寝る場所とリビングは、あとで俺が綺麗にしておくから。細かいところは、今度ハウスキーパーさんに来てもらおう」

悠生さんが明るくまくし立てる。慰められていることが、すごくよくわかる……。

「しばらく杏のお母さんにも来てもらえないかな。泊まってくれるように頼んでみるよ。大丈夫、俺のお願いなら快く引き受けてくれるだろうから」

「お……お母さんには、頼らないで生きていくって……決めたのに……」

「和解したのに、今さらなに意地張ってんのさ。それに、少しくらい頼ったほうがお母さんも喜ぶよ」

母も柚姫のことはすごくかわいがっているから、頼めば喜んで面倒を見てくれるだろう。でも家を出て好き勝手していたくせに今さら頼るのが格好悪くて、やっぱりここでも悔しさが募る。

「大丈夫だから、焦らないで。きっとすぐにいつもの元気な君に戻るよ。体が本調子に戻れば、ね」

「でも……」

ぐすっと鼻を鳴らしながらうつむく。こんなみっともない姿を悠生さんに晒すことが一番つらい。

「悠生さんは、前向きな私が好きって言ってくれたのに……。幻滅したでしょ?」

「そんなことを気にして泣いていたの?」
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