今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「あのですね! 眞木先生は私のことをそういうふうには見ていませんし、心配していただかなくても大丈夫ですから――」

言い募ると、彼は私に背中を向けてぼそりと言い放った。

「俺が大丈夫じゃないんだ」

「……西園寺先生?」

どことなく思い詰めているように聞こえて、思わず彼の前に回り込んでその表情を確かめる。

……どうしてそんな悲しい顔をしているのだろう。初めて見る表情で動揺した。

「……自分を救ってくれたお医者さまに恋をしてしまうんじゃなかったの?」

身に覚えのある台詞にドキリとした。それって私が病棟で言ったこと? ずっと気にしていたのだろうか。

「……もしかして、眞木先生が私の担当医だったから、ですか?」

確かに、眞木先生は私を助けてくれた恩人。

でも、当時の私はまだ二十歳。対する眞木先生は三十歳だ。結構な年齢差もあり、恋愛の対象として考えたことはなかった。

格好いいなぁとは思ったけれど、憧れのお兄さんという感じだ。

「でも、あれは八年も前のことですし」

「たった八年じゃないか。俺ははっきりと覚えているよ」

「え?」

西園寺先生の目が私を捉える。真っ直ぐで、鋭くて、でもどこか優しくて慈しむような眼差しが。
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