今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「……なんでしょう?」

「記事ができあがるまで、眞木先生と個人的に連絡を取らないこと」

「言われなくてもそのつもりですけど……どうしてです?」

「その間に、俺が君を落とすから」

「……はい?」

頭の中に疑問符がたくさん浮かんだ。西園寺先生は運転手のお姉さんに一万円を手渡して、「お釣りは彼女にあげて」と頼む。

西園寺先生がタクシーから距離を取ったのを見計らって、運転手は後部座席のドアを閉めた。動き出す車の窓から、彼がひらひらと手を振っているのが見える。

ちょっと進んだところで、私たちの会話を聞いていた運転手が親しげに話しかけてきた。

「お姉さん、お医者さまに口説かれているんですか? 羨ましいですねぇ」

頭の中がいまだ疑問符だらけの私は、逆に尋ねる。

「……口説かれたんでしょうか?」

「口説かれたんだと思いますよ」

はぁ、と私は気のない返事をする。

お釣りをきちんと受け取って、私は自宅の前で車を降りた。

一万円はちゃんと帰そうと思うけれど、プライドの高そうな彼が受け取ってくれるかどうか。
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