今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
直帰した私は、携帯端末の録音を確認しながら彼のインタビューをパソコンに打ち込んだ。

――自分が助けなければと思ったよ――

彼の力強い声が再生されて、手が止まる。

責任感と誇りに満ちた、とても立派な医師だった。

それが伝わるような記事にしようと、彼の言い回しや言葉遣いを少しだけ修正して、読みやすいかたちに加工する。

録音を再生したまま、ぼんやりと彼のことを考えていると。

――あんずちゃんって、眞木先生のことが好きなの?――

思いもよらぬ会話が再生されて、ボッと頬が熱くなった。会社で音声データを保管するときは、この部分をトリミングしないと。

再生を停止して、ふうと短く息をつく。私と眞木先生の仲を引き離そうとする彼。そもそも、くっついてもいないのに。

『俺が君を落とすから』

今のは録音ではない。私の脳内再生。シナプスから伝達されてきた甘い電気信号に参りそうになる。

どうして初対面なのに口説くようなことを言うのだろう? 

じっとしていられなくなり、さっさとシャワーを浴びてさっぱりしようと立ち上がった。

そのとき、私を引き留めるかのように携帯端末が震えた。着信だ。相手は――母親。
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