今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
あの母が私に電話連絡をよこしてくるなんて、ろくでもないことに決まっている。

どうせお見合いしろとか、転職しろとか、家に帰ってこいとかだろう。

無視したところで何度もかかってくることがわかりきっていたので、私は仕方なく応答した。

「杏ですけど」

『ちょっと杏。どうしてメールに返事をくれないの? もう一週間も経つわよ』

はて。メールなんてもらっていたかなぁと記憶を辿る。

一週間前――あれかな? お見合いに関するエンドレスメール。

私が「嫌だ」と言っているのに「考え直しなさい」と返ってきて、終わりのない不毛なやりとりが続いた。

そのうち私が面倒になってメールを放置。今に至る。

「何度も何度も嫌だって送ったはずだけど。あんな人と結婚したくないって」

騙されて無理やり連れていかれたお見合いで、私史上最低の男性と出会った。

あんな人と結婚するなら、一生独身のほうがマシ。

ただでさえ自分が家庭に入る姿なんて想像できないのに、彼はまだ結婚もしていない私に専業主婦になれと命令してきた。その時点で価値観の不一致でお断りだ。

『彼のいったいどこが気に食わないのよ。朝から晩まで働かなきゃいけないようなそんな過酷な仕事、辞めていいって言ってくれてるんでしょう?』

「そこよ」
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