パラダイス、虹を見て。
***

 不愛想。
 可愛い顔をしているのに、笑うことのない女の子。
 初対面が衝撃的だったから、その印象が強いけど。

 サクラと名乗る女の子は可愛い顔立ちだった。
 年は16~17歳くらいだろうか。
 絶対に年下だと思う。
 サクラは秘密の館に来てから2~3日は部屋に籠っていた。

 絶対にワケありなのだと思うけど。
 素性を詳しく聴いていいのかもわからず。
 私は放っておくことにした。

 毎日、日の出と共に畑仕事を始めて。
 時間が余ったら、庭園の仕事を手伝って。
 たまに、部屋の掃除をしたりお菓子を作るようなそんな毎日なワケで。
 ある日、サクラに「げっ」と言われた日には。
「あれ、いたの?」
 とすっかりと彼女のことを忘れていた自分だった。

 その日はアラレさんと草むしりをしていた。
 ピンク色の質素なドレス姿でいきなり、サクラが現れて。
「なんで、元貴族のクセに畑仕事してんの!?」
 と目玉が飛び出るんじゃないかっていうくらい、目を見開いて言われた。

「うーん。別に貴族じゃないし。もともと、農家の人間だし」
 ポイッと雑草を端っこに寄せて立ち上がる。
「朝何時に起きてんのよ、部屋覗いたのにいないじゃない」
 ほとんど悲鳴に近い状態でサクラが言う。
 近くにいるアラレさんはニコニコしながら手を動かしている。

「サクラ…ちゃんって言えばいい?」
 私はサクラに近寄る。
「私の侍女と言っても。毎日、好きに過ごしてくれていいんだからね。私も好き勝手に働いているから」
 そう言うと、サクラは(まばた)きを何度かすると。
「信じられない」
 と言って後ずさりをした。

「聞いてた話と違うわ…」
 ブツブツと呟きながら、サクラは館へ戻って行く。

「サクラにドン引きされたよ。アラレさん」
 アラレさんを見ると、アラレさんは、ふふふと笑う。
「ヒョウがどんなふうに説明したのか不思議だよね」
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