狼男  無限自殺 編


《彼は【失声症】を患っています。

どうです?これならBMUの本懐や怪人の秘密事項が外に漏れる事はありません。》


椿刑事部長から教えて貰った綾野の事。


元々、群馬県警の交通機動隊・・“白バイ隊員”として公務に当たっていた事。


細身の体からは想像もつかない程、200㎏を超す白バイを自在に操る技術を誇り、

全国白バイ安全運転競技大会で優勝経験も持つ若き天才・・。





《ユウマ君。人間には誰しも触れられたくない過去があります。

私達にとって大切なのは、

綾野君は剣術の才もあり、
怪人討伐の力を秘めているという事。》


椿刑事部長の言葉はもっともで、俺もわざわざ過去をほじくり返すつもりは無い。


だけど失声症は、

[突然まったく声が出なくなったり、出たとしてもしゃがれたりかすれたりしてしまう症状]


[その原因は精神的ストレスや心的外傷が大きく関係している]


白バイ隊員として公務を行ってきた日々の中、何かを抱えてしまったのは明らかだった。





《彼は“自殺”を希望していたので私が拾いました。

きっと全てがどうでも良かったんでしょう。

怪人という非現実的なおとぎ話の事もBMUの事も、“信じる・信じない”以前に、

どうでも良かったんでしょうね。》




「綾野。」


「・・。」


「大丈夫か?」


今から捜査・・いや接するのは自殺した人間の遺族。今から俺達は・・“自殺”と向き合う。


一応、心配になって聞いたけど、
“大丈夫です”と視線を送ってくれたので、

1階に着いたエレベーターを降りて婚約者君の元へと向かう。
























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