やわらかな檻
 思い浮かんだのは夢の中の光景だった。場所を変えて、状況を変えて、夢が現実になるのだろうか。『楽しそうなこと』を自らの手で掴めるだろうか。


「一緒に楽しむのは、例えば、どうやって?」


 仲直りができて安心したのかもしれない。

 彼女は上目遣いの瞳を一度、二度と大きく瞬かせて、目尻に透明な粒を滲ませながら、まるで祈るような恰好で両手を胸元に引き寄せた。

 そうして何かを噛み締めるように目を閉じ、ゆっくりと口許が綻ぶ。

 大きく息を吸って、「まずは飾り付けね!」と声を弾ませて立ち上がろうとすると、彼女の手を包む僕まで一緒につられかけた。


「飾り付けが終わってないの。朝になって驚かそうと思っていたのに、慧ったら途中で起きちゃうんだもの。一緒に飾りつけをするのも楽しいわ」

 立ち上がりかけて広がった視界の隅に、午前6時を示す時計。この子はいったい何時に起きて、何時にここに来たのだろう。

「……そうですね、また後でなら」


 逆に引っ張りかえし、バランスを崩した彼女を受け止めて二人で布団に転がった。

 不満を垂れて唇を尖らせても聞かない。寝るように諭すと飾り付けは諦めて、喋る方向に切り替えたようだった。クリスマスを自宅ではどのように祝うか、ここでは何をして祝いたいか、とめどなくつらつらと話している。


「プレゼントは? 何か欲しいものはない?」
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