嘘と愛

 だが翌年。
 理華の夫と名乗る人が病院へやって来た。

 理華の夫は新幹線の運転手で、草加部優太(くさかべ・ゆうた)32歳。
 理華とは結婚の約束をしていたが、急にいなくなり探していた。

 城里家に行って調べると、出産して赤ちゃんがいなくなり精神的に病にかかり入院していると聞いて、優太は理華の元へ向かった。

 優太が来ると、理華は少しずつ元気になってきたが、いなくなってしまった幸の事をずっと悔やんでいて未だに入院中のまま。

 優太は、そんな理華と結婚して支えている。
 そして未だに幸の行くへを探している。


 幸は右腕に、ハート型の痣があるのが特徴。

 理華ににているなら、思い込みが激しいところがあると思われる。

 そして優太に似ているのであれば、きっと、電車が大好きな子に育っていると思われる。



 資料には赤ちゃんの写真も添付されている。
 産まれたばかりでピンクの産着で可愛い女の子、ネームプレートには幸と書いている。
 右腕の上腕部に、ピンク色のハート型の痣がある。
 幸喜はその写真を見て、椿にも同じ痣があったのを思い出した。
 幸の産まれた日は椿の誕生日の1日前でほぼ同じ。


「もしかして…」


 資料を見ながら幸喜が呟いた。

 
「椿の右の腕に同じハート型の痣があるよ。赤ちゃんの時から、印象的だったから間違いないよ」
「そうですか。じゃあ、椿ちゃんも誘拐されてきた子だったのですね? 」

「これを見る限りでは、そうだろうね」
「椿ちゃんは、今はどこにいるのですか? 」

「父さんと母さんと一緒に、アメリカに行ったよ。日本にいると、心が乱れるみたいで」
「そうですか…」

「でも大雅は、どうやってこの情報を手に入れたんだろう…」
「大雅さんのお友達に、探偵事務所をやっている人が居るそうです。その人に頼んで、調べてもらったようですよ」

「そうだったのか…」
「みんな…被害者だったのですね…」

 幸喜はそっと、楓の手を取った。

「ありがとう、教えてくれて。椿が、本当の両親を探して欲しいと言ってアメリカに行ったんだ」
「そうだったのですか…」

「なんだか、とっても希望が見えて来たよ。椿にも、帰る場所があるんだね」
「はい…そうですね…」

「ねぇ、今日はこの後の予定は? 」
「いえ、今日は特にありません」
「じゃあ、僕に付き合って」


 10時近くにチェックアウトした幸喜と楓が、そのまま向かった先は。
< 109 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop