嘘と愛
 椿がいる療養施設だった。
 今日は検診があった為、椿の育ての父親が来ていた。
 一柳瑞樹(いちやなぎ・みずき)55歳。

 国際弁護士として腕利きの弁護士。
 アメリカと日本に数多くの事務所を構えている、とてもやりてである。
 眼鏡をかけたちょっと厳しそうな顔つきをしているが、背の高い落ち着いた感じで頼りがいのある人柄である。


 幸喜と楓が来ると、瑞樹は深く頭を下げて挨拶をした。

「初めまして、一柳です」
「初めまして、宗田です」

 瑞樹は幸喜と楓を見て、何か納得したように頷いた。

「わぁ、嬉しいなぁ。今日は、お父さんが2人も来てくれた」

 椿はとても喜んで、満面の笑みを浮かべた。

「一柳さん、すみません勝手に会ってしまいまして」
「いいえ、もう椿も成人していますから。誰に会っても自由ですよ。時々言っていたんです。もし、会えるなら本当のお父さんとお母さんに会いたいって。お2人を見れば納得します。椿の本当の両親だと」

 厳しい表情とは違い、ゆっくりと穏やかに話してくれる瑞樹。
 椿はじっと楓を見つめた。

「お母さん? 」

 椿が声をかけると、楓はそっと頷いた。

「お母さん…とっても綺麗な人なんだ。びっくりした。桜が綺麗なのも判る、お母さんがこんなに綺麗な人だもん」

「…ごめんなさい…ずっと、会えなくて…」

「ううん。お母さんに会えなくても、ずっとお母さんの事感じていたよ。育ててくれたお母さん、とっても優しかったし。お父さんも、すっごく優しくて。私、幸せだから何も気にしなくていいよ。でも、産んでくれて有難うねお母さん。会えて、嬉しい」

 とても素直な椿。
 そんな素直な椿を見ていると、楓は幸喜とそっくりだと感じた。

「宗田さん。こうしてお会いできたのも、ご縁ですから。これからも、よろしくお願いします。何も気兼ねなく、椿と会って下さいね」
「はい、有難うございます」


「お母さん、私の傍に来て」

 椿に呼ばれて、楓は歩み寄った。

 楓が傍に来ると、椿はギュッと楓の手を握った。

「お母さんの手、とってもあったかいね」

 そっと、微笑み合う椿と楓。
 その笑顔はとてもそっくりである。

< 110 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop