嘘と愛

「彼なら、そうしてもおかしくないわね。赤ちゃんが産まれた時、彼は喜び溢れて号泣していたくらいよ。彼の愛は、とっても深いもの。貴女と彼は、とっても深い愛で繋がっているものね」
「…はい…」

「そっか、やっと幸せになれるのね貴女も」
「でも…その前に、やらなくてはならない事がありますが」
「そうね。…もうそろそろ、その時が来たようね」

 瑠璃はリビングの奥にある和室に目をやった。



 和室。
 そこにある大きなスーツケース。
 それはもう、ずっと10年以上そのままで置いてある。
 これをねらっているのは…



 梅雨の空から夏の空へと変わりつつある今日この頃。
 7月に入り、夏の暑さが増してきている今日この頃。

 金奈警察署に、1人の若い男性が来ていた。
 髪を金髪に染めたチンピラ風な男性。
 小山悟(こやま・さとる)35歳。
 とあるクラブでボーイをやっている男であるが、ディアナと去年まで交際していた男である。
 最近もディアナと会って関係を持っていたが、高額なお金を要求され口論になった事から警察に出頭してきた。

 悟の出頭して来た理由は…。

 取調室で不貞腐れた顔をしている悟が、男性刑事に話している。

「ああ、そうだよ。俺は元組員だったんだ。去年、組を抜けて今は夜の商売で生計たててるよ。組にいた時に、ディアナと付き合っていた。警察署長の水原隆司って奴が着きまとってきて、断ると殺すとかでっちあげて牢屋に入れてやるって脅してくるって言うから。カッとなって、撃ち殺したんだよ。ディアナから、お礼に500万円もらったし。先週も久しぶりに連絡が来て、誘われたけど。一晩付き合っただけで、100万円も請求してきて口論になったけど。俺が、警察署長を殺したことを警察に言うって脅してくるから。自首してきたんだよ」
「銃はどうしたんだ? 」

 悟は懐から銃を取り出し、机の上に置いた。
 傍に居たもう一人の男性刑事が、その銃を持って行き鑑識に回した。

「あと、あの助産師を殺したのはディアナが今付き合っている男だよ。俺と同じように、あの助産師に殺されるとか、泣きついていたらしい。交通事故を装って、意識がないふりをしていただけなんだディアナは。そんで、その事故を引き起こしたのはディアナの付き合っている男だよ」

 悟の自供で、美奈を殺した真犯人も判明、隆司を殺害した犯人として悟が逮捕された。


 
 零はその事実を聞いて、なんとも言えない気持ちが込みあがっていた。
 犯人が自首してきても、ディアナは見つからないままだった。

 まだ出国した形跡はないようで、国内にいるようだ。

 悟の自供から、現在ディアナの交際している男は元組員で、まだ若い25歳の男で高田春樹(たかだ・はるき)という男だと判明した。

 さっそく高田春樹を指名手配した。

 ディアナは裏で手を回しただけで、殺害には手を貸していなかった。
 捕まっても罪が重くはない。
 22年前の乳児誘拐事件並びに乳児殺害事件の決定的証拠は、また上がってきていない…。
 ディアナを逮捕しない限り真相は闇の中のままだった…。






 船が行き交う港。
 人気のない船付き場に、全身黒い服に身を包み、つばの広い帽子をかぶったディアナが佇んでいる。

「あれさえ手に入れば…一生遊んで暮らせるわ」

 偽造パスポートを手に、ディアナは不敵に笑いを浮かべた。

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